猫の防災対策の基本
日本は地震大国です。
いつなんどき、どこで地震などの大きな災害に遭うかは誰にもわかりません。
天災が起きてしまうことを避けることは難しいものの、万が一の時に防災知識・備えがあるかないかで自身と大切な家族である猫を守れるかどうかが変わってきます。
猫と一緒に安心して暮らす上での最低限の知識として、普段から猫の防災対策の基本をしっかり押さえておくことが大事です。
猫の防災の基本は「か・き・く・け・こ」で覚えておくと便利です。
これは2017年の熊本地震で被災なさった、熊本市中央区にある「竜之介動物病院」の院長、徳田先生が考案した猫の防災対策についての考え方です。
猫の防災対策「か・き・く・け・こ」とは
猫の防災対策「か・き・く・け・こ」は以下の内容の頭文字をとったもの。
き=キャリーバッグ
く=薬・ご飯(備蓄品)
け=健康管理
こ=行動・しつけ
飼い主のマナー・責任
飼い主のマナー・責任については、普段から次のようなことを心がけておくことが重要です。
- 迷子札・マイクロチップの装着
- 猫の避難場所の確保
- 完全室内飼い
- 室内の家具の固定
大きな地震が起きた際、普段家の中だけで過ごしている猫が驚いて外へ飛び出したり、窓のサッシが歪んだり網戸の隙間から逃げ出してしまうという事案が多数発生しています。
とても悲しいことですが、災害時の猫の脱走は平時の脱走よりも猫を保護することが大変困難場合が多いです。
尚、猫の脱走については、参考記事地震など災害時の猫の脱走と保護方法でもまとめています。
【迷子札・マイクロチップの装着】
まず一番最初にできる飼い主としての備えは猫に迷子札やマイクロチップを装着しておくことです。
迷子札は首輪に装着しますが、猫用の首輪は安全のために一定の力がかかるとパチッと外れる仕組みになっているものが多いです。
これは高いところへ登ることが多い猫が、首輪に障害物が引っかかって首吊り状態になることを防ぐ安全対策のためですが、迷子札が外れてしまう可能性があります。
そのため、体内に埋め込むタイプのマイクロチップも取り入れておくという二重の脱走時の対策が推奨されています。
マイクロチップは動物病院での装着費用は数千円、登録料は1,000円です。病院によって装着費用は異なりますが、登録料と併せて1万円以下でできるところが多いようです。
【猫の避難場所の確保】
また、地震が起きたときにさっと猫が逃げ込めるスペースを常に確保しておくと、猫が外へ逃げることを予防することができます。
家具の転倒やガラスの飛散が起きないと思われる安全な場所にキャリーバッグを常日頃から置いておくなどの対策が考えられます。
【完全室内飼いを心がける】
参考記事猫は完全室内飼いがおすすめでも書いていますが、災害時にお外をお散歩している場合、家に戻ってこれなくなる可能性もあります。防災対策としても猫は完全室内飼いがおすすめです。
【室内の家具の固定】
これは猫と暮らしているご家族だけではなく、防災対策として最低限必要なことですが、大型の家具や家電製品は大きな地震がきてもすぐに倒れない様にツッパリ棒や固定器具などでしっかり固定しておくことを心がけましょう。
また食器棚などの開き戸にはストッパーをつけ、窓ガラスにはガラス飛散防止のシートを貼る、棚の上など高いところには重い荷物を置かないなど、人間の防災対策が猫の命を守ることにもつながります。
キャリーバッグ
キャリーバッグは動物病院へ猫を連れていくときなど、普段から使用されている方が多いと思いますが、災害時のためにプラスチック製などのハードタイプと布製のソフトタイプ二種類あるとより安心です。
プラスチック製のハードタイプのキャリーバッグは避難した際の猫の居住スペースとなります。
布製のバッグタイプは気軽に移動できる反面チャック式の場合は力の強い猫さんの場合自力で開けてしまったり、布のメッシュ部分を噛み千切ってしまったりとハードタイプに比べて脱走の危険性は高まります。リュックタイプのものも両手が空き、避難時には便利なのですが、背中には目が届かないためやはり脱走の心配があることは否めません。
もちろん猫が普段から落ち着いて問題なく入っていられるキャリーバッグであればハードタイプでもソフトタイプでも使いやすいものを備えていれば避難は可能です。ただ、個人的には災害時の備えとしてはハードタイプのものを一つ持っておくとより安心かと思います。尚ハードタイプでも力の強い子は脱走してしまうこともあるので、実際の災害時はハードタイプのキャリーバッグを更にテープなどで補強しているシーンも多く見受けられました。
また、キャリーバッグとは別に折りたためるタイプのポータブルケージやポータブルトイレも備えておくと避難が長期化した時に猫の生活環境を整えてあげることができます。
尚、キャリーバッグやポータブルトイレは色々な種類がありますが、ポータブルケージは今のところ以下の猫壱さんのものが使いやすく、人気もありおすすめです。
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薬・ご飯(備蓄品)
猫の防災対策として、薬とご飯といった災害時の備蓄品を常日頃から揃えておくことも重要です。
薬は特に持病を持っている猫の命に関わるものです。日ごろから余裕を持って動物病院に処方してもらい、切らすことのないように気を付けましょう。また薬自体のストックを非常用持ち出し袋に入れておくことも有効ですが、日常的に非常用持ち出し袋から薬を取り出す使い勝手が悪ければ、処方されている薬の名前だけでもわかるように処方薬の袋を入れておくと薬の名前や処方量のメモ代わりになります。
またご飯・フードについては、毎日のご飯に使いながら備える「ローリングストック法」を取り入れましょう!
4日分8食分(12食分)のフードを備え、毎月1回1食分を消費し、その分を補充していく方法。
8カ月で最初の8食分が全て入れ替わります。ウェットフードは缶詰よりもパウチタイプ、ドライフードの場合は小包装のものを利用すると便利です。
また、人間用と共有できる「水」の確保を忘れずに。
水は人間用だと軟水・硬水どちらでもOKですが、硬水は猫にとってはミネラル分が多すぎて良くありませんので、軟水を備蓄しておくようにしましょう。(猫などのペットには硬度60以下が良いとされています。)
健康管理
健康管理は猫の防災対策としてはもちろんですが、日々猫が健やかに暮らせるように日ごろから気を付けておく必要があります。
猫の身体の状態やおしっこ、うんちの状態、食事内容、吐き戻しの有無や体重管理など日ごろからチェックしておくと、災害時に大切な猫の体調の変化に気付きやすくなります。
また、ワクチン接種、ノミ・ダニの駆除、不妊・去勢手術は猫と暮らすための基本的な項目ですので、よほどの理由がない限りはきちんと対応しておきましょう。
参考記事猫の去勢・避妊手術の必要性
行動・しつけ
災害時に必要な猫の行動に関するしつけは、キャリーバッグ、ハーネスやリードに慣らしておくことが最も重要だと感じています。
その他、他の人間や動物が周りにいる環境に避難することが考えられるため、家族以外の人間や他の動物、音に慣らしておくという考え方もありますが、生後8~12週の「社会化期」を過ぎてしっかり大人になった猫にとっては、なかなか普段から慣らそうと思っても難しくストレスになってしまうことが多いため、個人的には無理に他の人や動物にならすのはおすすめしません。
災害時の備えとしては普段からキャリーバッグを猫の生活環境に置いておき、安心できる場所として鳴らして置く「クレートトレーニング」や、室内でハーネスやリードをつけて過ごす時間を時々設けて慣らしておくと万が一の時に役立ちます。
参考記事猫のしつけについて
猫の防災対策に関する本
猫の防災対策に関する本については、以下の2冊がおすすめです。
「どんな災害でもネコといっしょ」は、この記事の猫の防災対策「か・き・く・け・こ」を考案なさった龍之介動物病院の徳田院長が監修なさっている本です。