猫とキスは危険!?感染症に要注意!
猫同士のキスを見て可愛い~と思ったり、自宅の猫のあまりの可愛さについついキスしてしまったり・・・更には猫を口で吸う「猫吸い」をする人間のご家族も結構いらっしゃいます。
猫からキスをしてくれる場合もありますし、猫好きにとっては猫とのキスは至福の時かもしれません・・・。
しかし、猫がいくら可愛くて仕方がなくても、猫は獣であることには間違いありません。
人間とは違う種族の猫、保有している菌も人間とは大きく異なるため、猫とのキスなど過度の接触は人間にとってはリスクが高い行為なんです。
人間が猫とキスするなど過度な接触を行うと、具体的にどういったリスクがあるのかをまとめました。
目次
猫とキスすると感染する可能性がある感染症
まず、人獣共通感染症という動物から人間に感染する病気があります。
猫の場合は以下のような感染症が特に猫から人間へ感染する可能性がありますので知識として知っておいて損はないでしょう。
パスツレラ症
猫の約100%が口腔内常在菌として保有しているのがパスツレラ菌です。
例えば猫に咬まれたりひっかかれたりして人体の中にパスツレラ菌が入ると、痛み、腫れ、化膿などの症状が出ることがあります。
また、発熱や呼吸器障害が出ることもあり、受傷部位が関節に近いときには、関節炎、骨にまで達するような深い傷の場合は骨髄炎になることもある怖い菌です。
口腔内常在菌ですので、もちろん猫とのキスで人の体に入ることもあります。
このパスツレラ症は、猫にかまれたり、ひっかかれたりしたことによる皮膚化膿症が主だとされてきましたが、近年の調査結果によると、実は日本では鼻から肺までの呼吸器系の感染が最も多くパスツレラ症の約60%を占めているということです。※1
猫とキスすることが習慣になっている方で定期的に風邪のような症状に悩まれていたご家族が、実は猫からのパスツレラ菌によるパスツレラ症だったということもあります。
パスツレラ菌による皮膚可能症に似た症状で猫にひっかかれたことで起きる「猫ひっかり病」もありますが、こちらはバルトネラ・ヘンセラ菌という菌が引き起こす症状です。傷を受けた患部が腫れることに加えリンパ節が腫脹することが特徴的です。
パスツレラ症にしろ、猫ひっかき病にしろ猫に噛まれたり、ひっかかれた場合は起きる可能性がありますので、皮膚科などを受診しましょう!
カプノサイトファーガ感染症
カプノサイトファーガ感染症を引き起こすのは、、カプノサイトファーガ・カニモルサス(C. canimorsus) 、カプノサイトファーガ・カニス(C. canis)及びカプノサイトファーガ・サイノデグミ(C. cynodegmi)の3種の菌。
こちらも犬や猫の口腔内常在菌です。
2004~2007年の調べで、自治体に引き取られた猫115匹の57%からカプノサイトファーガ・カニモルサスを、84%からカプノサイトファーガ・サイノデグミ(C. cynodegmi)を保有していました。※2
とはいえ、パスツレラ症や猫ひっかき病に比べると報告される症例数は少なく、感染成立率は低い菌です。
感染しても稀にしか発症しないと考えられているカプノサイトファーガ感染症ですが、発症すると発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などが引き起こされます。
厚生労働省のカプノサイトファー感染症に関するサイトが参考になります。
参考リンクカプノサイトファーガ感染症に関するQ&A
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症
もう一つ猫から感染する可能性がある人獣共通感染症に、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症があります。
コリネバクテリウム・ウルセランス菌が原因菌で、感染するとジフテリアと類似した臨床症状が現れます。
感染初期には風邪に似た症状を示し、その後、咽頭痛、咳などとともに、扁桃や咽頭などに偽膜形成や白苔が現れることがあります。
人、犬、猫、牛のほか、様々な動物において感染事例が確認されており、海外では特に牛の生乳からの感染が主に確認されていましたが、近年になり、ウルセランス菌に感染した犬や猫からの感染が認知されてるようになっています。
特に最近では、2018年の1月に日本国内で初めてコリネバクテリウム・ウルセランス感染症による死亡例が確認されています。(猫からの感染の可能性が高いと報道されています。)
また、コリネバクテリウム・ウルセランス菌はパスツレラ菌やカプのサイトファーガ菌とは異なり、猫にとっても感染すると、くしゃみや鼻汁などの風邪に似た症状や皮膚病が現れます。(無症状の保菌動物の存在も報告されています)
もし、一緒に暮らしている猫に思い当たる症状ができいる場合などは、早めに獣医へ連れていくことの他、猫と接触した場合などは消毒を徹底するように気を付けましょう。
厚生労働省のコリネバクテリウム・ウルセランス感染症に関するサイトが参考になります。
参考リンク厚生労働省のコリネバクテリウム・ウルセランスに関するQ&A
猫とのキスで死亡もありうる?
猫とキスして死亡?と聞くと大げさに聞こえますが、日本国内でも猫が保有している細菌が人間に感染したことにより起きている死亡事例がありますので、猫とのキスで死亡する可能性はゼロではありません。
パスツレラ症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症ともには日本でも死亡例が出ている感染症です。(症例についても、前述した厚生労働省のサイトで調べることができます。)
猫とのキスは控えた方が無難
パスツレラ症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症といった猫から人に感染する可能性のある人獣共通感染症は猫に噛まれたり、引っ掻かれたりした際はもちろんですが、口腔内に多く存在する菌でもあるため猫とのキスは避けた方が無難です。
また、特に上記の菌に感染して症状として出るのは体力が落ちている時や持病がある場合などが多くの症例で確認できています。
ご自身が疲れている時などは、キス以外の猫とのスキンシップでもちょっと気を付けて手を洗うなど感染予防に努めましょう!
猫同士がお鼻とお鼻でキスしている姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか。これは相手の臭いを嗅ぐことでご挨拶をしていると言われています。同じように猫はご挨拶気分で人間に鼻キスをしてくれるのです。
鼻キスを人間にしてくれるということはある程度心を許してくれているということなので人間にとっては大変うれしい仕草ですが、感染症のリスクもあることをしっかり頭に入れておきましょう^^;
時々ご自身が猫とキスをして特に症状が出ないことから、猫とのキスは問題がないと判断する方が少なからずいらっしゃいますが、感染しやすいかそうでないかは個人差がありますので、鵜呑みにしないように気を付けましょう。(インフルエンザに毎年かかる人もいれば生まれてから1度もかかったことが無い人もいるのと同じで、感染する可能性があるという事実は間違いありません。)
※1http://hdkkk.umin.jp/cases/past0101.html
※2イヌ・ネコ咬傷・掻傷とCapnocytophaga canimorsus 感染症 モダンメディア 56 巻 4 号 2010[話題の感染症]