飼いやすい猫の種類
「飼いやすい猫の種類ってありますか」と時々聞かれることがあるのですが、一概にどの種類の猫が飼いやすいと答えを出すのは難しい問題です。
猫は犬ほど品種・種類によって見た目の違いは大きくありませんが、当然それぞれの品種・種類による特徴はあります。
特に純血種や血統書付きと言われる猫は毛の長さや毛色、基本的な性格以外にも、遺伝的にかかりやすい特定の病気もあり、何の知識もなく見た目の好みだけで血統書付きの猫を飼い始めてしまうと後から驚くこともあります。
目次
飼いやすいと言われている猫の種類
では、飼いやすい猫の種類は・・・というと、一般的に、飼いやすい猫は雑種(ミックス)であると言われることが多いです。
理由としては、純血種(血統書付き)と違い、色々な遺伝子が混じっているため特定の病気に対するリスクが低いという点が挙げられます。
けれど、雑種の猫が純血種や血統書付きの猫に比べて病気をせず、丈夫かというと、科学的に証明されているわけではありません。
そのため、猫の飼いやすさで言うと、獣医さんの間でも雑種が丈夫なので飼いやすいという方もいらっしゃれば、特に違いはないという方もいらっしゃいます。
ただ、私自身の経験から言うと、感覚的に純血種の猫はお世話の際に特定の遺伝的な特徴からやや神経を使うことはあります。(スコティッシュはなるべく骨に負担をかけないように遊んだり、鼻の低いアメショやペルシャなどの種類は涙が出やすいのでこまめに目の周りをきれいにしてあげたりなど)
そのため雑種の猫の方が比較的安心してお世話できるというのが本音です。ただし、これはあくまで気持ちの問題であり、結局はその子の個別の特徴による点が大きいです。
我が家にも5匹の雑種猫がいますが、内1匹はやや病気がちです。
逆に知り合いの純血種の猫たちで、健康ご長寿さんを多数知っています。
私の個人的な経験から言うと、雑種だからと言って、必ずしも健康で丈夫とは言えません。
誰しも一緒に暮らす猫には健康で長生きしてほしいと思うものですが、こればっかりは、成長していく過程でしかわからないため、雑種でも純血種でも病気はするものと思って、生涯大切にお世話をするという覚悟が必要です。
とはいえ、雑種猫と純血種の特徴の違いや、純血種特有の性格の傾向や遺伝しやすい病気についての知識を事前に知っておけば、人間の暮らしや考え方にあった、その人なりの飼いやすい猫を選ぶことは可能だと感じています。
主な猫の種類による遺伝的にかかりやすい病気
アメリカンショートヘアやスコティッシュフォールドなど、人気の高い猫以外にも猫の種類は100種類以上あります。
ここでは、日本で飼われていることが多い以下の種類について、主な性格と遺伝的にかかりやすい病気についてまとめました。
アメリカンショートヘア
アメリカンショートヘアーは基本的にがっしりとした体つきで比較的丈夫な猫であることが多いです。
ただし、肥満になりやすい子が多く、肥満から糖尿病や関節疾患のへ繋がることもあります。
そのほかにかかりやすい病気としては肥大型心筋症や脂漏性皮膚炎などが知られています。
肥大性心筋症は、心臓の左心室の壁が厚くなってしまい、血栓ができやすくなります。また1回の鼓動で全身に送りだす血液の量が減るため、少しの運動でもハァハァと息が荒くなることがあります。
脂漏性皮膚炎になりやすい子はしっぽの付け根付近が皮脂でぺったりしっとりとしていることが多いです。
そういう子はブラッシングするとフケがたくさん出ることもあります。
アメリカンショートヘアの性格は陽気で活発、人懐こい子が比較的多いため、性格的には飼いやすい子が多いですし、日本では純血種としては一番人気がある種類でもあります。
とはいえ、太りやすかったり運動を十分にさせてあげる必要があるため、フードの管理に自信がない方やあまり猫と遊んであげる時間が取れない方には健康管理が難しく飼いやすい猫ではないかもしれません。
アビシニアン
アビシニアンはスラリとした身体つきと活発な性格が特徴的です。
ご飯を良く食べる子でも肥満体型になる子は少ないのでご飯のコントロールは比較的容易な印象です。(適量を与えることが前提です。)
とにかく活発な印象ですが、気が強い子も多く、心を許していない相手には怒りっぽい面もあるため、時にアビシニアンが凶暴になるといった事例も聞きます。
私もアビシニアンちゃんには時々怒られることがあります^^;。
アビシニアンがかかりやすい病気としては、ソマリやシンガプーラとも共通するのですが、遺伝的にピルギン酸キナーゼ欠損症を起こしやすい猫種です。
ピルギン酸キナーゼは、赤血球細胞のエネルギー代謝において重要な酵素です。この酵素に欠損がおこるとエネルギーの産出が妨げられ、赤血球を破壊し、先天性の溶血性貧血を引き起こしてしまいます。
遺伝的な病気であるため、ブリーダーさんが交配する猫の遺伝子をしっかりと検査・考慮なさる方であれば、リスクが低いのですが、現状はすべてのブリーダーさんがしっかりと考慮して繁殖されているとは言えない状況のようです。
どの純血種にも当てはまりますが、どうしても純血種の猫と暮らしたい場合は、しっかりと適切な環境で猫を飼育・繁殖している誠実なブリーダーさんを選ぶ目も必要です。
シンガプーラ
シンガプーラもアビシニアン同様、ピルギン酸キナーゼ欠損症を起こしやすい猫種です。
やはり非常に活発で人懐っこい部分があるものの、やや神経質な性格の子も多くいます。そのため1~2匹では飼いやすいかもしれませんが、それ以上の多頭飼育の場合は飼いやすいとは言えない印象です。
スコティッシュフォ-ルド
スコティッシュフォールドは、「耳折れ」と呼ばれることもある、小さ目の耳がちょこんと折れた容姿が特徴的です。
おおらかでマイペースな上にちょっとおとぼけな要素もあり、愛されキャラです。
基本的には大人しいのですが、怖がりさんの場合、恐怖から威嚇してしまう子もいるものの、自分から攻撃してくるような性格ではない場合が多いです。
甘えん坊な性格の子が多いため、一匹での長めのお留守番はストレスになる子が多い印象です。もちろん個別の性格や相性にもよりますが、スコティッシュフォールドは2匹以上で飼うのが個人的にはおすすめです。
スコティッシュフォールドはその猫種の産まれた経緯が骨の奇形であることから、先天的に骨軟骨異形成症になりやすい種類の猫です。骨軟骨異形成症は文字通り骨や軟骨の異常が原因で、骨の変形や軟骨が増殖してコブができたりする遺伝的な病気です。
また股関節が他の種類の猫より柔らかいスコティッシュフォールドは「スコ座り」と呼ばれる特徴的な座り方で長時間落ち着いている子もいます。
見た目はかわいいのですが、股関節にあまり負担がかからないように家族がしっかりとチェックをしてあげることが必要になります。
また、スコ座り以外にも、寝そべったときに後ろ足をペタンと床につけて伸びる特徴的な姿も見ることがあります。
なるべく関節に負担をかけないように体重管理に気を付けたり、遊ぶ時も着地する床が柔らかい場所を選んであげるなど、骨や関節に優しい環境を整えてあげることが必要です。
性格的には穏やかで一般的に飼いやすいとされている猫の種類ですが、気を付ける点は多いです。
ノルウェイジャンフォレストキャット
ノルウェイジャンフォレストキャットは豪華な長毛のルックスと穏やかな性格が魅力的な猫です。
小さい子供にも寛容に接してくれるなどとても優しい性格の子が多いのですが、意外にも活発な性格で遊び好きです。
ノルウェイジャンの猫が遊んでジャンプしている姿は大きくてゴージャスなモップが宙を舞っているようで一見の価値があります。
ノルウェイジャンフォレストキャットは神話に登場するほど歴史のある猫で、人工的に作られた猫種ではないため遺伝的にかかりやすい病気などはないと言われていますが、太りやすいため肥大型心筋症や、肥満による糖尿病は気を付けたい病気です。
また長毛種のため、こまめなブラッシングは必須ですので、短毛種に比べると毛のお手入れは入念に行う必要があります。
ペルシャ
ペルシャは長毛種を代表する猫で、日本でも長毛の猫といえばペルシャと思う浮かぶ方が多いのではないでしょうか。
低いぺちゃんとしたお鼻や少し離れた目などお顔も特徴的です。
毛の色やタイプによって「チンチラ」「ヒマラヤン」と呼ばれることもあります。
映画やアニメなどではお金持ちに飼われているいじわるな猫役とイメージがついてしまっていますが、基本的にペルシャは非常に温厚で優しい性格の子が多く、いじわるとは程遠い性格です。
(推測ですが、映画ジェームズボンドシリーズに登場する悪役エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドがペルシャ猫を常に膝に乗せて登場していたのが始まりではないでしょうか・・・)
一匹でのんびりゴロゴロマイペースが好きな性格の子が多いので、1匹飼いでも飼いやすい猫です。
ペルシャはお鼻が低く、目とお鼻の距離が近いのが特徴ですが、その距離が近すぎるため鼻涙管という涙を鼻に流す管が圧迫されて涙目になりやすいという遺伝的な症状も多く見られます。
そのため涙が良く出てしまい、目頭の部分が常に涙で濡れ、汚れた状態になります(涙やけ)。
こまめに柔らかいティッシュやガーゼなどで拭いてあげることできれいな状態を保てますが、毎日何度も拭いてあげるのはなかなか大変です。
また、「多発性嚢胞腎」という病気もペルシャ系の猫には遺伝的にみられる病気です。腎臓の内部に水分の詰まった「嚢胞」(一度できてしまうと元には戻らない)が次々にできていく遺伝性疾患で、ゆっくりと進行し、最終的には腎不全になってしまいます。
親のどちらかに、腎臓を構成するタンパク質を作り出す特定の遺伝子の異常があると、子どもに遺伝する確率は50%と言われています。
アビシニアン系のピルギン酸キナーゼ欠損症とも共通しますが、子猫に遺伝する病気であるため、ブリーダーさんが交配する猫の遺伝子をしっかりと検査・考慮なさる方であれば、リスクが低いです。
ただし、現状はすべてのブリーダーさんがしっかりと考慮して繁殖されているとは言えない状況のようですので、
しっかりと適切な環境で猫を飼育・繁殖している誠実なブリーダーさんを選ぶ目が必要になってきます。
また、皮膚疾患や目の病気にもかかりやすいと言われています。長毛猫なのでこまめなブラッシングやカットが必要になることもあり被毛のお手入れには気を使う猫種です。
ペルシャは純血種の中では遺伝的にかかりやすい病気が多い猫ですので、性格的には飼いやすい猫なのですが、体調管理や被毛の管理がしっかりできる方でないと難しいかもしれません。
メインクーン
メインクーンは猫種としては最も大きくなる種類の一つです。成猫で特に大きいメインクーンはライオンのような風格が漂う子もいます。
性格も温和で穏やか、おっとりとした子が多いです。またとても賢く、私の知っているメインクーンの猫も賢者のような雰囲気をまとった子がいて、人の言葉の意味もしっかり理解してくる印象です。
遺伝的にかかりやすい病気も少ないのですが、大型猫には多い心臓病(肥大性心筋症)は遺伝的にかかりやすい病気と言われています。
毛は長毛で特に胸の部分の毛は絡まりやすく、こまめなブラッシングや季節によってはカットしてあげることも必要となります。
とにかく体が大きいため、快適に過ごせるスペースや動物病院へ行く際などの移動の手段が確保でき、毛のお手入れをしっかりできるご家族であれば比較的飼いやすい猫種です。
ラグドール
ラグドールは「ぬいぐるみ」という意味を持つ猫種で、その名の通りぬいぐるみのようなモフモフと大きな体つきが特徴的です。身体つきもガッチリしており、猫の中では大型の猫種です。
性格は温和で優しく、甘えん坊な子も多いです。猫には珍しく抱っこが好きで長い時間抱っこしていても気持ちよさそうに撫でさせてくれるという点もまさにぬいぐるみのような猫種です。(とはいえ、抱っこ好きかどうかは個性によるので、嫌がるラグドールの子もいます。)
おっとりして運動量はそんなに多い方ではないものの、やんちゃで好奇心旺盛な面もあり、かわいらしいです。
ラグドールがかかりやすい病気としては大型の猫種故、心臓病(肥大性心筋症)が挙げれることが多いですが、その他遺伝的にリスクの高い病気はあまり聞きません。
比較的丈夫な猫種であるという印象です。
長毛猫の中では毛も絡みにくいのですが、短毛種に比べると当然ブラシングなどはこまめにしてあげる必要があります。大きめの猫なので病院に連れて行ったり、移動させるのは力が必要だったり、移動手段に自家用車がないと難しい場合が多いのですが、被毛をしっかりきれいに保ってあげるお世話ができる方にとっては飼いやすい猫の種類に入るのではないでしょうか。
ロシアンブルー
ロシアンブルーは柔らかく銀色に輝くブルーの被毛が特徴的な猫の種類です(ブルーは猫の場合グレーの毛を指します)。「ボイスレスキャット」と呼ばれ、鳴き声をほとんど出さず、声も小さいことが有名です。(中には良くおしゃべりする子もいますので一概には言えない気がします^^;)
賢そうな理知的な顔立ちで、性格的にも人によくなついてくれる子が多い反面、慣れていない人に対しては警戒心が強くやや神経質な性格です。激しく怒るというよりも、心を許していいない人にはツンツンした態度で、うかつに触ろうとするとピシャリと毅然とした態度で怒る子が多い印象です。
相性の良い2匹飼いくらいまでは問題ないと感じるのですが、それ以上の多頭飼育には向いてない猫種かもしれません。
ロシアンブルーは遺伝的にリスクのある病気はあまり聞きません。定期的なブラッシングは必要ですが、短毛種なのでお手入れは比較的楽です。
運動は好きですが、食事管理をしっかりしないと太りやすかったり、猫種としてやや神経質な部分がある子もいるので、来客が多かったり小さい子供の相手は苦手ですが、1匹でもマイペースに過ごすのが得意なため比較的飼いやすい猫種になると思います。
飼いやすい猫の性格
飼いやすい猫の性格については、どのような性格の子と相性が良いかは、実際に暮らしてみないとわからない部分が大きいです。
猫の種類によっても一般的な性格の傾向はあるものの、人間と同じでその子その子の性格の特徴があります。
活発だと言われるアビシニアンでものんびり屋さんはいますし、比較的温厚だと言われるスコティッシュやラグドールなどでも、怒りんぼさんはいます。
もしも、どうしてもある程度性格がわかっている猫と暮らしたいという場合は、子猫ではなく成猫から飼い始めることをお勧めします。
参考子猫と成猫飼いやすいのはどっちか
猫の種類と飼いやすさのまとめ
以上のような内容をもとに、猫の種類と飼いやすさについて表にまとめてみました。
一般的に言われている内容に加え、私自身が特定の猫種さんと接してきた経験上の意見も含まれていますのでやや偏った内容になっている可能性があります。
また、病気については下部尿路系の疾患(腎臓や膀胱など)は猫全般がかかりやすい病気ですのですので、表にない場合での下部尿路系の疾患はかかりやすいものとして認識ください。
猫の種類 | 飼いやすいポイント | 飼いにくいポイント |
アメリカン ショートヘア |
陽気で活発・人懐っこい 短毛種 |
太りやすい 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 肥大性心筋症 脂漏性湿疹 涙が出やすい 比較的丈夫 |
アビシニアン | 活発で運動好き 短毛種 太りにくい |
やや神経質で怒りっぽい 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 ピルギン酸キナーゼ欠損症 (先天性の溶血性貧血) |
スコティッシュ フォールド |
おおらかでマイペース ちょっとおとぼけの癒しキャラ |
甘えん坊なので1匹だけので長いお留守番は苦手 太りやすい 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 骨軟骨異形成症 |
ノルウェイジャン フォレストキャット |
優しく寛容 活発で遊び好き |
大きい身体に合う広めのスペースが必要 動物病院などへの移動が大変 長毛種でこまめなブラシングが必要 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 肥大性心筋症 比較的丈夫 |
ペルシャ | 優しく穏やか 1匹飼いでものんびりマイペース |
長毛種でこまめなブラシングが必要 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 涙が出やすい 多発性嚢胞腎 目の病気 皮膚の病気 遺伝的にかかりやすい病気が多め |
メインクーン | 優しく寛容な性格 非常に賢い |
大きい身体に合う広めのスペースが必要 動物病院などへの移動が大変 長毛種でこまめなブラシングが必要 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 肥大性心筋症 比較的丈夫 |
ラグドール | 優しくおっとりした性格 抱っこが好きな子が多い |
長毛種(長毛の中では毛は絡まりにくい) 大きい身体に合う広めのスペースが必要 動物病院などへの移動が大変 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 肥大性心筋症 比較的丈夫 |
ロシアンブルー | 従順で賢い 活発で運動好き 鳴き声が小さく滅多に鳴かない |
慣れていない人には警戒心が強い 神経質な面がある 太りやすい 【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 比較的丈夫 |
雑種 (ミックス) |
色々な柄・タイプ性格の子がいる 比較的丈夫と言われている |
【遺伝的にかかりやすい病気・症状】 その子の特性による 丈夫な子が多いがその子次第 |
飼いやすい猫種を検討することも重要ですが、純血種を飼う前に、雑種の子を飼うという検討もおすすめですよ。
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