猫の粗相やストレス軽減、「フェリウェイ」フェロモン製剤の使用法や効果について
猫の粗相やスプレー対策、ストレスによる問題行動などで悩んでいるご家族はご存じの方も多いアイテム、猫のフェロモン製剤「フェリウェイ」について、その使用法や効果、副作用などをまとめてお伝えします。
猫の粗相や尿スプレーの対策について、フェリウェイ以外の対策も別記事でまとめています。
参考記事猫のスプレー対策について
参考記事猫がトイレで失敗(粗相)するときは
実際にフェリウェイを使用した感想や猫への効果、体験談もありますので、ご自宅の猫にフェリウェイを検討している際の参考にしてみてくださいね。
目次
「フェリウェイ」とは何か?
まず、「フェリウェイ」をご存じない方のために、簡単にフェリウェイについての説明を書いておきます。
「フェリウェイ」はフランスに本社のある動物薬専門メーカーのVirbac(ビルバック)社が開発した猫のフェロモン製剤です。
日本では、ビルバックジャパンという日本法人がフェリウェイの輸入・販売を行っています。
公式サイト株式会社ビルバックジャパン
このフェリウェイは、猫のフェイシャルフェロモンF3類縁化合物配合です。
フェイシャルホルモンF3とは、猫の頬から分泌されるフェロモンの一種で、猫に安心感を与え、情動を落ち着かせる効果があると考えられています。
猫が人間や家具、柱など自分のお気に入りのものや、自分のものだということを示したい箇所に頬をスリスリすりつける行動はこのフェイシャルホルモンをつけて安心しているためです。
フェイシャルホルモンはF1~F5に分類されていますが、それぞれ構成物質や役割が異なることがわかっています。
フェイシャルフェロモンの種類 | 構成成分 | 機能 |
---|---|---|
F1 | オレイン酸、カプロン酸、トリメチルアニン、5アミノ吉草酸、酪酸、α-メチル酪酸 | 機能は不明 |
F2 | オレイン酸、パルミチン酸、プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸(p-hydroxyphenylacetic acid) | オス猫の性的なマーキング、生殖行動に関係している |
F3 | オレイン酸、パルミチン酸、プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸 | 一般的なマーキング、縄張りの維持に関係している |
F4 | 5β-コレスタン酸-3β-ol(5β-cholestan acid 3β-ol)、オレイン酸、ピメリン酸、酪酸 | 仲間間の友好的マーキング |
F5 | パルミチン酸、イソ酪酸、5アミノ吉草酸、酪酸、α-メチル酪酸、トリメチルアニン、アゼライン酸、ヒドロキシフェニル酢酸(p-hydroxyphenylacetic acid) | 機能は不明 |
F1~F5の内F2、F3 、F4は大体の役割がわかっていますが、F1、F5についてはまだ機能も不明のようです。
フェリウェイは上記の猫のフェイシャルホルモンの内、猫の縄張りの維持やマーキング行動と関係性の高いF3のフェイシャルホルモンを人工的に作り出した製品です。
フェロモンによって猫を安心させ、ストレスを緩和させたい場合に使用されます。
猫に配慮した動物病院でよく使われている他、粗相やスプレー、家族や同居猫への攻撃など問題行動を起こす猫に使用されることが多いです。
※F4フェロモンはFelifriend(フェリフレンド)の名前でフランスのceva社で販売されていましたが、日本では通販などでも入手できません。
どうやら製造中止になっているようです。amazonなどでもフェリフレンドは取り扱いがないので、同じような効果の「フェリウェイ」のみを本記事では紹介しています。
「フェリウェイ」の種類
現在販売されているフェロモン製剤「フェリウェイ」は液状のフェリウェイをコンセントに繋ぐ拡散器に入れて、空間に拡散させるタイプと、ミスト状に吹きかけるスプレータイプの2種類があります。
こちらが、拡散タイプのフェリウェイ。
セットするリキッドとコンセントに繋ぐ拡散器部分がセットになっています。
写真を見て頂くとわかるのですが、よくある壁についた上下に穴があるタイプのコンセントの場合、フェリウェイの拡散器を付けると、残りのコンセント穴は使えなくなるので少し困りますね。
上の穴を無理に使おうと思えば使えますが、注意点にも書いてあるのですが、フェリウェイの拡散口の上は何もふさぐものが無い様にする必要があるため、上の穴も使わないほうが良さそうです。
動物病院の他、amazonや楽天などのネット通販でも購入可能です。
そして、こちらがプッシュするとミスト状に吹きかけられるスプレータイプのフェリウェイです。
拡散タイプの方が1日中部屋にフェリウェイを使っていることになるので、効果が高いという声が多いです。
スプレータイプは例えば必ず決まった場所に粗相をするといった場合、ピンポイントで使えますが、1日に何度かスプレーする必要があります。
「フェリウェイ」の効果
フェリウェイについては、実際にどのくらい問題行動を起こす猫に効果的なのか、日本での実験結果が出ています。
関東中部地方でのフェリウェイスプレータイプを使用し36の事例でスプレーをしてしまう猫に対しての実験です。※4
結果治療前の週での猫のスプレー平均頻度は、14.2回/週だったのに対し、治療の1週間目から効果が見え始め、週に4.2回まで減少が見られたということです。また治療を終了後4週間経っても効果が継続したともあります。
また、海外の調査でもスプレータイプのフェリウェイを資料した75~95%の猫で改善が見られ、完全に尿スプレーをしなくなった猫は33~96%という結果もあります。拡散器型のフェリウェイの場合は70%現象したという結果もあります。
また、猫スプレーや粗相以外にも、不適切な場所での爪とぎや外猫、同居猫に対する不安・攻撃、人間の家族に対する攻撃などの問題行動に対しても一定の効果が出ることが色々な論文でまとめられています。
ただし、ここからはあくまで管理人の個人的な印象ですが、尿スプレーや不適切な爪とぎ、病院など不慣れな場所での不安緩和、猫同士のストレス緩和には効果があるイメージですが、人間の家族に攻撃をしてしまう猫にはあまり効果がなかったという声が多い気がします。
尚、フェリウェイの副作用についても、ほとんど目立った事例の報告は見当たりませんでしたので、副作用も基本的にないものと考えて大丈夫そうです。
フェリウェイの詳細
リキッド+拡散器のフェリウェイの詳細をパッケージに表記されている内容を元にまとめておきます。
フェリウェイセット内容・成分
猫のフェイシャルフェロモンF3類縁化合物:2%
イソパラフィン系炭化水素溶剤:98%
【拡散器の仕様】
定格電圧:100V 50/60Hz共用
消費電力:5.6W
【保管方法】
室温保管
フェリウェイ使用上の注意
フェリウェイの注意事項も多いのですが、まとめておきます。
●本品に衝撃を与えたり、分解、修理、改造したりしないでください。
●リキッドボトルを専用拡散器に取り付ける際に、逆さまにしたり振ったりしないでください。液漏れの原因となることがあります。
●成分の拡散を妨げる恐れがありますので、カーテンや家具の陰で使用しないでください。また、換気扇や空気清浄機からなるべく離れた場所に設置してください。
●使用中はリキッドの揮発性を高めるため、拡散器の内部拡散口の温度が高くなります。通常は拡散器内部には触れられないよう設計されていますが、やけどや関電の原因となりますので、拡散口に指を入れないでください。特に小児や動物に注意してください。
●濡れた手でコンセントの抜き差しをしたり、針金やピンなどを本体内に差し込んだりしないでください。感電や故障の原因となります。
●必ず本品を垂直に設置して使用してください。逆さまや横向きにするとボトルからリキッドがこぼれ、床や壁を汚す場合があります。
●拡散器天面の穴を絶対にふさがないでください。
●拡散器は不燃性ですが、本品内部にリキッドまたは埃、毛などが付着すると、茶褐色に変色し、焦げや煙の原因となることがあります。その場合は本品をコンセントから抜いて使用を一旦中止し、乾いたコットンなどで付着物を拭き取ってから使用を再開してください。
●使用しない時は、本体に埃がかぶらないような場所で保管してください。
●拡散器に洗剤、水などの液体をかけないでください。故障やショート(発火)の原因となります。
●拡散器に劣化(変色や焦げなど)が認められた場合は、すぐに交換してください。
●拡散成分が稀に薄い白煙、蒸気として見えることがありますが、異常ではありません。
●リキッドをこぼした場合はすぐに拭き取ってください。塗装面やプラスチックなどを傷める場合があります。
●リキッドが皮膚についた場合、石けんと水でよく洗ってください。
●リキッドが目に入った時は速やかに流水で洗い流し、医師に相談してください。
●誤ってリキッドまたは装置の一部を飲み込んだ場合は、本品を持参に速やかに医師に相談してください。
●使用中に気分が悪くなった時はただちに使用を中止してください。
●リキッドボトルの内容物を詰め替えないでください。
●芯棒は固定されていますので、無理に引っ張ったり動かしたりしないでください。
●火気の近くで保管、使用しないでください。
●直射日光が当たる所や、AV機器の上など高温になる場所には置かないでください。
フェリウェイの使用方法
拡散タイプのフェリウェイの使用方法も簡単です。
1:ボトルのキャップを回し、ゆっくり真上に引き抜いてください。芯棒は折れることがありますので、丁寧にお取り扱いください。
2:ボトルの芯棒が専用拡散器の穴に、下から垂直に入るようにセットしてください。その際、芯棒が専用拡散器のセラミックヒーターに触れないようにしてください。
3:必ずボトルを下側にして、専用拡散器のプラグを壁のコンセント(家庭用100Vの電源)にしっかりと奥まで差し込んでください。しばらくすると成分が拡散しはじめます。
【使用方法の注意点】
●猫が一番よく過ごす部屋に1個設置してください。
●猫の行動範囲が70㎡(約45畳)を超える場合も、もう1個設置してください。
●ご使用に際して、延長コードなどは使用しないでください。
●1日24時間の通電で、「フェリウェイリキッド」が約4週間前後使用できます。(部屋の面積、換気、通電などの設置状況により、使用期間が変わることがあります。)
●本製品を最善の状況でご使用いただくため、専用拡散器は6カ月間、もしくはリキッド6本ごと私用ごとに新しい専用拡散器に交換してください。
スプレー行為をする猫フェリウェイ使用の体験談
管理人がスプレー行為を行う猫にフェリウェイのスプレータイプ、拡散器タイプを使用した体験談も書いておきますね。
雄のミックス猫が人間の家族が増えた契機でスプレー行為を始めるようになりました。
スプレー行為を始めたのは6歳時点、それ以前はスプレー行為は見られませんでした。
先にミストでスプレーするタイプのフェリウェイを試しましたが、こちらは目立った変化が感じられず、拡散タイプのフェリウェイを使用。
完全に尿スプレー行為がなくなることはありませんでしたが、明らかに回数が減少しました。
3日1回程度の頻度が2週間に1回程度に減少。その後フェリウェイの使用をやめた後もしばらくは効果が続きましたが、一定期間が経つとまたスプレーの回数は戻りました^^;。
【参考文献】
※1 The Behaviour of the Domestic Cat, 2nd edition. CABI(2012).Bradshaw JWS, Casey RA, Brown SL.
※2 Current research in canine and feline pheromones. Vet. Clin. North Am. Small Anim. Pract(2003), 33: 187–211.Pageat P, Gaultier E.
※3 The influence of chemical signals on the social lives of domestic cats and implications for applied settings. Applied Animal Behaviour Science (2017), 187:69–76. Shreve KRV, Udell MAR. Stress, security, and scent
※4 Clinical trial of a feline pheromone analogue for feline urine marking. Ogata N1, Takeuchi Y.
※5 A Meta-Analysis of Studies of Treatments for Feline Urine Spraying.